心躍る長旅。

名古屋駅、定刻どおり到着。
足がむくんで、スニーカーが入らないっっっ!
と、力任せに引っ張ったら、
人差し指のツメが割れた。

広島駅まで乗ったタクシーに、
ものすげー遠回りされたことも思い出し、
なんだか到着早々、ハラ立って来た。

駅構内に入ると、
年配の男性が担架の上で心臓マッサージを受けていた。
「1!2!3!」という、救急隊員の声と、
遠巻きに心配する人たち。
どこかから、夜行バスで来たのかな。
車内は狭いし、思ったよりしんどかったのだろうか。
にしても、旅を始めるつもりだったのに(かどうかわからないけど)
駅で倒れるなんて思ってもみなかったことだろう。
なんだか、人間て強いけどもろくて、
いつどこでどうなるかわからなくて、
生もので、はかないなあ、と思うと、
ものすごく悲しくなってしまった。

ベンチで気持ちを鎮め、聞こえてきたのは、
TOKIOの“AMBITIOUS JAPAN!”
明るい曲調に救われ、また旅気分が高まった。
広島駅では、終日“いい日旅立ち”が流れてる。
それも悪くはないんだが…、
どうせなら、TOKIOのこの曲のほうが、
明るい気分になれていいなあ。

マリオットアソシアホテルへ。
て、泊まるんじゃなく、トイレを拝借。
夜行バスを降りたあとは、ホテルのトイレに限る。
BGMは流れてるし、清潔だし、うっとり。
歯をみがいて、顔を洗って、メガネも洗って、
間の抜けた寝起きヅラから、おでかけ顔に化けて、外へ。

名古屋は雪。さぶい。
地下のスタバの場所がどうにもわからないので、
バス乗り場近くのお店で朝ゴハン
クロックムッシュウとゼリーとカフェオレ。
すでによれよれの時刻表を繰り、
チラシの裏の予定表を見つめながら食べる。
柴咲コウと直太朗と柴田淳の曲が流れてた。

そして出発。
改札で今日の日付を押してもらって、
無謀な旅が始まったのだった。わくわく。

中津川行きの電車は、
姫路〜米原間の快速を上回る乗り心地。
電車が進むにつれ、雪の降り方は激しくなり、
雪の粒も大きくなっていった。
あぁ、今から私が行くところはどんなに雪深いのかしら。

中津川で1回目の乗り換え。
「なかつがわ (岐阜県中津川市)」という表示を見ると、
遠くまで来たかんじがしてきた。
せっかくなので、もちろん改札の外に出る。積雪。
観光案内所でパンフレットをもらう。
“いつもはこんなに降らないんですよ。
 今日はセンター試験だっていうのにね。”
と、係員の女性。
名物らしき「栗きんとん」とクオリティーラッテでオヤツタイム。
ホームにいると、法事で岐阜に向かう女性が話しかけてきた。
“気ままでうらやましいわァ。
 ええなぁ、ひとり旅…。気ぃつけていってらっしゃい〜”

早めに並んで、窓際の席を確保。
そこに来たのは、年配の男性3人組。
上諏訪までの鈍行の旅らしい。
“おねえさん、ごめんね。オッサンがやかましくて。”
「いえ、そんなことないです」
て言ったら安心したのか、
“ちょっとだけ飲もか”“そうしよか”“ちょっとだけな”
と、旅行かばんから、ビールと紙コップと煎餅を取り出して、
楽しそうに飲み始めた。
3人は元同僚で、歳もわりと近くて、
時々こんなふうに鈍行で旅行するのが楽しみなんだ、
なんて話を聞きながら、
電車は雪の中を進むのだった。

窓の外の雪の世界は、どんどん深くなる。
積もった雪が激しく舞い上がったりしている。
びっくり。
窓ガラスから、冷気が伝わってくる。
あぁ、うっとり。

塩尻で、下車するオッサン(笑)3人に手を振り、
やがて終点松本に到着。
あぁ、白線流し
“まつもとーーーまつもとーーーまつもとーーー”
のアナウンスが、ふるさとっぽい?かんじ。

いやあ、松本まで来てしまったよ。
来れるもんだなあ。
昨日の今頃は、まだ会社にいたのに。

たえまなく降る雪。
12:30現在の気温は−1℃と−2℃を行ったり来たり。
すごー。
すぐそこのコインロッカーに行くだけで、雪まみれになった。
MIDORIという駅ビルには、
チープでかわいい服がたくさんあった。
もっと時間があれば、いろいろ買ったかも。

駅前を散策。おなかすいた…。
目に入ったのはドトール
松本まで来て、何もドトールに…とも思ったけど、
これだけ寒い日のカフェオレって、
さぞかしさぞかしおいしいだろうな、とやっぱりドトール
どこにでもある、ツナとチーズのサンドイッチは、
なんだかちゃんと松本の味がした。
それに、カフェオレは、やっぱりものすごくおいしかった。
その間も、やむことのない雪。
こんな雪、見たことない。
うれしくてうれしくて、ひとりじゃなければ、きっと大騒ぎしてた。
心の中で、ひゃっほおう。と飛び跳ねる。

ジーンズが冷たい…。
ジーンズやスパッツの上から、
レッグウォーマーを重ねてる女の子たちがうらやましくなった。

本当は、行きたいカフェがあったんだけど、
バスの本数が少なくてあきらめてしまった。
また来ればいいよね。

もっとゆっくりしたかったけど、
次の目的地へ向かうべく、大糸線に乗る。

今回の旅のキッカケになった、
「目指せ完乗!JR乗りつぶしマップ」
(「旅」8月号の付録)によると、
この大糸線の稲尾駅が、
“真正面のアルプスと木崎湖を堪能したい無人駅”
と、紹介してあり、ぜひとも見たくなったのだ。

松本を発車してまもなく、やや下の方に見える道路には、

高山  94km
上高地 50km

という標識。上高地まで50キロ!!
えらい遠いとこまで来たもんだ。
と、また実感。

窓の外には、アタリマエのようにつららが。
惜しげもなく無尽蔵につらら!
折って食べるのが、子どもの頃夢だったことを思い出した。

広がる風景は、とても非日常。
いつもの毎日や、仕事のことは遥か彼方へ。
ぜいたくな現実逃避。
でもその反面、
自分と向き合わざるを得ない、ひとりの長い時間は、
現状・現実を目の前に突きつけられているような…、
ちょっとひりひりする瞬間も何度もあったりする。

信濃大町で乗り換えたあとは、
なんだか降りる人がとても少ない。
座席はけっこう埋まってるのに。
みんなどこまで行くのだ?
稲尾駅で降りるのは私だけで、
ドアを開けるタイミングが合わなくて、
降りれんかったらどうしよ。かっこわる。
折り返しの電車を43分も待たなきゃいけないのに、
待合室が吹きッさらしだったらどうしよ…。
などと、だんだん不安になったとき、
稲尾のひとつ手前の信濃木崎に到着。
ホームのベンチには、雪が15センチほど。
ひー。…。

が、稲尾の待合室は、ちゃんと建物になっていた。
のを確認して、急いで降りる。
おいてある除雪機から、ガソリンの匂い。

目の前は、湖とマッシロな山。
聞こえるのは、地元の人が雪を掻く音だけ。
迫力ある静けさは、言葉にできなかった。
感動。
年季の入った標識や景色の写真を撮る。
乗りつぶしマップ」と長野県の地図を飽きることなく見る。
どんなにか凍ってるんだろ、と触れた雪は、
たくさん積もっているのにフワフワで、
思いっきり手をついたので、腕まで埋まってしまった。

そこに
“週末いかがおすごし?”と、いつもの友達からメイル。
「長野に来てるのだ。」と送ったら、あきれていた。
ほとんど誰にも知らせず、出発したのだった。
“広島到着は何時?”って、
日帰りはちょっとムリじゃろう(笑)。

待ち時間は、思ったよりあっというまだった。
再び松本へ。
スノボを抱えたグループが何組か。
白馬で滑ったのだろうか?
白馬といえば、上村愛子ちゃん。
とか思いながらのんびり。
信濃大町で、試合帰りらしき女子バレー部が乗ってきた。
きっと地元だと“静かにしてくれぃ”と思うであろう、
友達のことや試合のことを話すにぎやかな声も、
旅先では、その土地の空気を感じながら、
優しい気持ちで聞くことが出来たりなんかして、
とても印象に残ったりする。

途中で隣に座ったおねえさんは、
延々々と化粧をしていた。
乗車時と降車時で、どれだけ違うのか見たかった。

松本からは、篠ノ井線で長野へ。もう夕暮れ。
女性車掌の車内放送が、とても聞き取り易く、
耳にも心地よく、時々居眠り。
姨捨駅では、けっこうなスピードでのスイッチバック
ひゃっほう。
善光寺平の夜景もとてもキレイで、胸にしみた。
9年前、
徳島あたりの山奥で初めてスイッチバックを経験したときは、
ものすごく驚いて、
“なんでバックするん?しかもこのスピード…!
 故障したんじゃないじゃろーね。こわいよう。”と、
友達とふたりパニクったものだった。

18:21、長野到着。0℃。
松本の方が寒いなんて意外。しかも昼間だったのに。
駅のキレイさ、豪華さに圧倒される。
そうか、長野オリンピックがあったんだった。
目に入ったのは大きな本屋。すてき。

本屋の1階にある信州そば屋さんをチェック。
ガラス越しに見ると、
ひとりでも気兼ねない大きいテーブルがあった。
よしよし。

ホテルへ向かう歩道にも、雪掻きのあとが。
すごいなあ。
フロントの女の子に、オススメそば屋を聞いてみたら、
さっき見た店と、そうじゃないのと、
ふたつ教えてくれた。
“ゆで具合が地元でも評判”という「そうじゃない方」へ。
がらがら。と戸を開けたら、お客さんは私だけだった。
なんとなく身をすくめながら、お品書きを見た。
なめこそばと…ビールも飲んでしまえ。と注文。
テレビでは、阪神大震災から9年、のNHKニュース。
そうだよね…、とじっと見ながら待つ。
“お待たせしました”と、テーブルに置かれたのは、
エビスビール(瓶)とグラスだった。
うおー。ひとり瓶ビールなんて初めてだよ。
泡がぎりぎりまで盛り上がるくらいに注いで、
かーっ。
と飲んだ。おいし。
おいしいけど、この光景どうなんだろうか。
独身女子として。…と思いながら、
できないことがまたひとつ減った♪
と、悪い気はしないのだった。

なめこそば…ものすごくおいしかった。
「ゆですぎ直前」の絶妙なゆで加減、
ゆずがきいてて、あぁおいしい。
おかわりしたいほどだった。

さっき見つけた駅前の本屋へ。
旅先の本屋ってのは、ものすごくその土地の空気を感じる。
土地によってガラリと雰囲気が変わる訳じゃないのに、
どうしてだろ。
旅先で買う本は、広島でも買える本だとしても、
今・今日・この時間でこの天気だから、
買う気分になったのかもしれなくて、
それだけでも充分に意味があって、思い出深いものになる。

さんざん電車に揺られ、日常から離れたあと、
夜遅くまで開いてる本屋に居る、という、
ちょっと日常に近いかんじの時を過ごしていることに、
なんだかものすごくしあわせを感じ、
また、昼間の車窓からの景色や、山や湖など、
見たもの感じたことが、心の中で実っていくかんじがした。
こんな旅をするためなら何だってやるわ。
ずっとこうやって生きていこ。
と、強く思った。

本屋さんの閉店時間を見ると、22時だった。意外。
出発前、長野のことを調べていると、
どんなお店も閉店時間が早くて、
なーんかつまらないかも?
などと思っていたのだった。
でも、本屋とスタバは22時まで。
それだけで充分だった(笑)。

買った3冊の本を持って、そのスタバへ。
ここはなんと、本日のコーヒーが選べる。初めて見たー。
今日は、ハウスブレンドとスラウェシ。
けど、今日飲んだのはラテ。
歩道の端の雪と、“日本通運”を眺めながら、ぼー。

このスタバに来るのは、この旅のメインのひとつだった。
オリジナルタンブラーが、
白樺と雷鳥と信州りんごのイラストで、
ものすごーくかわいくて、ほしかったから。
実物を見て、心躍る。
でもまぁ、買うのは帰りでいいよね。
とホテルに帰る。

駅前のお土産屋さんは、まだ開いていた。
何時までなんだろ?

あぁ、なんて充実した土曜日。
しかも旅はまだ長い。うっとり。

ブロードキャスター”では、
「カメラつきケータイで短歌を楽しむ人」特集。
旅先で見るテレビ番組やCMって、
お店や頭の中で流れていた音楽と同じく、
ものすごくよく覚えていることが多い。
今日のこの特集も、きっと長年覚えているだろう。
ポップジャムなど見て、26時ごろ寝た。

今日しゃべった人は、17人だった。
意外としゃべってるなぁ。
結局、数えたのはこの日だけ(笑)。

***今日の一曲
     AMBITIOS JAPAN!  〜TOKIO

***今日の気温
     −1℃・−2℃  12:30(松本市
        0℃     18:30(長野市