今だから

ひさしぶりに泣いた。
いや、わりとよく泣くけどひさしぶりに大泣きした。

どれくらい大泣きかというと、
息ができないくらい。
目が開かないくらい。
泣き止んだとき寒気がしたくらい。

ひどいことをされたとか、ケンカしたとか、
そういうことではなくて…。

さいころからがまんしたり押さえたりしていたことが
急に目の前にやってきた。
あの頃はがまんしてるとか押さえてるなんて
思ったことはなかったのに。

子どもらしくない態度で、周りの雰囲気をうかがって、
常に場を明るくして、笑わせて。
もめている大人たちの心の中から、
怒りの種をすべて消し去りたかった。
私の言葉で大人たちが笑ったら、
もめごとは終わると思っていた。

…なんで?さっきみんなで笑ったのに。
わからなかった幼い私は、
何度もおもしろいことを言ったり、微笑みかけたりしていた。

ゴハンを食べてもテレビをつけてもトイレに行っても
涙は止まらなかった。

やっとふつうに戻ってみると、すっきりしてる自分がいた。
そうか。思いっきり泣いたらすっきりするってこと忘れてた。
長年のがまんのこと、意地っ張りのこと、寂しかったこと、
やっとあの頃の自分に近づいて、頭をなでてあげたくなった。
大丈夫よ。大人になったら楽しく暮らしてるよ。
ほんとうはいつも愛されていたんだよ。ってね。

そのことがわかっただけでも、
大人になることも悪くないと思ったよ。