どこに行っても。

ダイビングに行くみんなを見送り、
そこらを散歩して写真を撮って、
ベランダでビールを飲んで本を読んで、
長ブロして本を読んでのんびり…。
どこに居てもやることは一緒なのだった。

天井で大きなファンがゆっくり回るホテルの部屋。
ベランダから部屋に戻る一瞬の、
湿った木のような独特のにおいが
子どもの頃の夏休みを思い出させるようで、
こりかたまった気持ちがほぐれるような気がした。
それがとても心地よくて
何度も部屋とベランダを行ったりきたりしていたら、
高校野球を見ながらそうめんが食べたくなった。

TVの洗剤のCMなど見て楽しむ。
でも結局、NHKワールドを見る。
日本語のニュースなど聞いてホッとする。

街なかは、渋滞と砂ぼこりと物売り。
清涼飲料水の大きな看板と、たえまなく鳴るクラクション。
好きではないと思っていた光景なのに、
ちっともいやではなくて、
昔のざらついた写真を見るようになつかしい感じがした。
あぁ、楽しい。

簡素な家で暮らす人たち。
そこで営んでいるお店の看板は
とっても色鮮やかで、商品の並べ方もかわいくて、
素直に単純にとても心ひかれた。
でも友達は、
“ものすごい貧富の差だよね…”と言った。
何だか、心ひかれた自分の気持ちがとがめた。
でも、そんなとがめる気持ちこそが、
思い上がりのような気もした。
とにかく、なんだかんだ言っても私は、
何の心配もなくぬくぬくと暮らす日本人なんだな、
と思った。

スタバへ行った。
テーブルもイスもポスターもスタッフの感じも、
まるで日本と同じだった。なんか安心。
が、サンドイッチの大きさに、
日本ではないことを思い知ったのだった。
ご当地タンブラーを買って満足。

かわいいTシャツを買う。600円くらい。
友達はTシャツとスカートとサンダルを計1000円で。
負けた〜(笑)。
物価が安いってすてき。

あるお店にいる時、ブレーカーが落ちて
店内がまっくらになった。
が、誰もあわてることなくそのまま接客していた。
ふふっ。のんきだなあ…。
日本だったら、
“申し訳ありません!”て誰かがあやまって、
速攻で対処するだろうし、
私もたぶん、ムッとするんだろうなあ。

夜中、月と星がとてもきれいだった。
ホテルのプールで騒ぐ友達の声を聞きながら、
帰りたくない〜!と思った。

帰りの空港で、
ゲートの外で見送るガイドさんに手を振ったら、
とても寂しくて涙が出てきた。
とても素朴で優しくていい人だった。
あまりにさびしくてさびしくて、
いっそのこと、このガイドさんがすごい二重人格で、
“今日帰った日本人なんかさぁ〜”と
家や会社で私たちの悪口を言いまくるような
悪人だったら気が楽なのに、と思うほどだった。
日本から離れたこの場所で、
ガイドさんがいつも笑顔で暮らせますように。
テロが起きたり台風が来たりしませんように。
ハードなガイドの仕事で体調をこわしませんように。

飛行機の窓から、
空港の看板と乾いた空を見てまた涙。
まさか自分がリゾート地へ行くとは思っていなかったけど、
とてもなつかしく優しいかんじがするところだった。

ホテルの部屋からベランダに出るドアの重さと、
ノブの感触は、きっといつまでも覚えているだろう。

日本に着いたら冬だった。
空を見たら、冷えた空に月が光っていた。
なんか不思議な感じ。

***今日の一曲
     月凪  〜東京エスムジカ