はじめての富士登山

新大阪でコウくんと合流、
三島駅ののさんに拉致(笑)され、イザ河口湖へ。
緊張が高まりつつも、楽しい車内。

ホテルについて、おでんさんと初対面。
あまりちゃんとお話できなかったような…。緊張。
VEGA隊長とコマルファミリーも勢ぞろいし、
山ルック(といっても普段と変わらないが)
に身を包んで、さぁ、出発。
…と、この↑3行の詳しいことは、なんか憶えていない。
とにかく、緊張とうれしさが交互に押し寄せ、
しゃべりまくっては黙り、
黙り込んでは、はしゃぎまくっていた記憶だけが…(汗)

すばらしい夕陽を眺めながら五合目へ。
あぁ、ホントに登るんだよね。
まずはピクニック気分で、腹ごしらえ。
子コマル(勝手に命名(笑))ふたりは、
ものすごくかわいくて、おもしろくて、
本気でいっしょに遊んでしまった。
コマリンこと、コマルさんのダーリンは、
なんとなく、イメージ通りのような気がした。

ストレッチをしたり、コーヒーを飲んだり、
颯爽とやってきたじんちろりんを、熱烈歓迎したり、
出発までの時間は、あせらずに楽しく、
努めてリラックスしてすごすようにした。

そして、出発。
お見送り隊のあたたかい声援を背に、
6人で、マックラな道を歩きはじめる。
ちょっとした、石の出っ張りに、
つま先を引っかけそうになったりして、
“こんな平らな道でこんなことじゃ…”と、
いささか不安になる。
けど、歩く。もう歩くしかないのだ。
速さを競うわけじゃないから、努めてだらだら歩く。

やがて、最初の岩場。
どこに足を置いて登ればいいのか、
どこに力を入れて登ればいいのか、
コツがちっともわからなくて、なかなか辛かった。
“こんな最初っから、こんなに辛がっていたんじゃ…”と、
いささか不安になる。
ほんとうに、泣きそうになった。

岩場を越えた頃、アタマが痛み出した。
くーーーーーーーっ。と、締めつけるような痛み。
“これが高山病???こんな下のほうで??
 もしかして、みんなに迷惑をかけることになるのかな…”と、
またまた不安になる。
でも、もうしばらく様子を見てみよう…、と思って、
何も言わずに歩きつづけた。

歩きながら、掲示板やメイルでの、
激励メッセージを思い返していた。
とてもうれしかった、数々の応援…。
でも、今思えば、登山の不安や準備のことで、
気持ち的にイッパイイッパイで、
ちゃんと受けとめていなかったような気がした。
歩き始めた今、やっと心に届いた気がした。
…たくさんの人が応援してくれてるんだ。とチョイ泣き(笑)。
ものすごく心強くて、急に元気が出てきた。

んで、ヘッドランプの位置が不安定なので、
直そうと思って、頭からランプをはずすと。

あのしめつけるような、頭痛から解放された…。

ゴムがきつかっただけでした。なんじゃ。

となると、もう絶好調。あはーん。
…が、調子に乗ってはいけない。

VEGA隊長は、さすがに健脚。
岩場でも、たいらなところでも、
さっ。さっ。  てかんじで、とてもなめらかな歩き。
コウくんは、その隊長に続いている。
コマリンは、いつも
“あれっ?いつのまに前を歩いているの?”
というかんじで、一番うしろを歩いてるはずが、
気がつけば、前のほうを歩いていて、
表情ひとつ変えず、淡々と確実な歩み。
おでんさん親子は、お互いの荷物や服装を
気遣ったりして、日記に書いてあるイメージのままの
親子だなぁ、なんて思った。
あのリュックには、なしまで入っていたのですね…(泣)

七合目あたりだったか、山小屋がたくさんあるのだけど、
小屋と小屋の間は、わりと激しい岩場で、
スネやヒザを何回も何回もぶつけた。
ただ、コツのようなものがわかってきたので、
ある意味では、最初よりもかなりラクになった。
それに、たくさんの山小屋のおかげで、
ひんぱんに休憩できるので、わりと気もラクだった。

持ってきたキットカットを食べたら、
メチャメチャおいしかった。
チョコレートが、こんなにおいしいなんて。

休憩時間は、食べ物だけではなく、
“しゃべる”ということが、ものすごくリフレッシュ効果があった。
息を吐くから、酸素がたくさん入って来るのか、
気分転換になるのかは、わからないけど、
どんなにツマラナイことでも、しゃべると元気が出た。

それにしても、ツアーでの団体さんがおおい。
大勢で登るのは、大変だろうなあ。
ペースを合わせようと、プレッシャーにもなるだろうし、
何しろ、ばたばたとせわしない。

高度があがるほどに、星空も美しくなる。
隊長が、北斗七星とオリオンを教えてくれたとき、
どこにあるのか、しばらく見てもわからなかった。
それはなんでかっちゅうと、
大きく見えすぎているからなのだった。
あんなにデカい北斗七星もオリオンも、
まったくもって見たことがない。びっくりよ。
天の川もよく見えた。流れ星は3回見た。
あぁ、この星空が見たかったのよ。
ものすごくうれしくて、休憩の時はもちろん、
歩いている時も、少しでも余裕があれば
しょっちゅう星空を見てばかりいた。

八合目あたりから、足がいうこときかなくなってきた。
上がらないのよ、足が。
また不安が襲い始めた休憩の時、
“今から胸突八丁だ”というではありませんか。
どんなにしんどいのだろう…。と途方にくれる。
でも、不思議と息切れはしない。
とにかく、足が思うように動かなくなってきた…。

岩に足をぶつけたり、つんのめりそうになったり、
杖を落としそうになったり、どんどん抜かされたり、
自分の世界に入って、一生懸命、登っていると、
なんだか、情けなくなってくる。
こんなどんくさい登り方をしているのは、自分だけで、
他の人は、顔色一つ変えずに、
涼しい顔して登っているような気がしてしまうのだった。

でも、休憩のとき、他の人の様子を見ていると、
休憩直前の最後の一歩で、
誰もがみんな、心からホッとした表情をするのだった。
“あぁ、誰もいっしょなんだなぁ”としみじみ思う。
なんか、一事が万事というか、
毎日の生活でも、自分だけがヘナチョコで
自分だけがドンくさい気がすることって、わりとよくある。
でも、この富士山で目の当たりにしている
他の人の表情が、人生を表しているように思えた。
“みんな一生懸命なんだなぁ”と。

それに、
頂上はまだまだだけど、ふと下を見れば、
後ろから登ってくる人たちのランプが、
数珠つなぎになって、果てしなくつづいている。
その、果てしなくつづくランプの距離だけ、
確かに登ってきたんだ、と思うと、
一歩というものがどれだけ大切かをしみじみ思った。
これも、一事が万事というか。

胸突八丁は、無事越えた。
私にとっては“足突八丁”ってかんじだった。
あーーーーーーーーー、足がーーーーーーー…。

やがて、最後の山小屋にたどりついた。
スタッフ?の女の子が、登山客にかける声が
“こんばんはー”から“おはようございまーす”に変わった。
時計を見たら、3時過ぎ。
おでんやおしるこで、ホッとひといきついた。
途中でわかれたおでんさん親子、今ごろどこにいるかな…。
と、とても気になる反面、
それぞれのペースで、確実に歩くことの大切さというか、
“一緒に歩いてないけど、心は一緒”
という気持ちでいっぱいだった。

おしるこがヤケにおいしい。
気力が、足の痛さに押しつぶされそうだったのに、
信じられないくらい元気が出た。
みんなで、楽しくしゃべったのもよかったのでしょう。
“ご来光に間に合うだろうか”という、
新たな心配事も発生したにはしたけど、
おしるこ食べて、しっかり防寒して、

“よしっ!”

という気分になる、万人日記登山隊なのだった。

が、このあとが最もつらかった。
どうしても、長い距離を歩けない。
ちょっと進んでは休む、の繰り返しになってしまった。
淡々としていたコマリンが“…きつい”と
元気なコウくんが“…長い距離歩かれへん”というくらいに。
私は最早、無言(笑)。
VEGA隊長は、元気。超人…(笑)。
うしろを振りかえると、東の空が明るくなってきている。
ものすごく幻想的…。見とれながらも、ちょっと焦る。
頂上に登らなきゃ意味がない、なんて、
少しも思っていないけど、ここまできたらやっぱり、
頂上でご来光を見たかったから。

なんとか、だましだましな感じで、
狛犬と鳥居のところまでたどりついた。
このとき、4時半。
“この左カーブの先がすぐ頂上”と励ます隊長の声に、
「よし!もうちょっとがんばろう!」と
みんなで声をかけあった。

ここからの底力は、すごいものがあった。
あんなに上がらなかった足が、ぐんぐん動く。
登るスピードも、倍近かったんじゃないかな。
ぐんぐん登りながら、
だーーーーーーーーーーーーーーっ。と涙が出た。

この富士山。
キッカケは、昨年秋の大オフの、帰りの新幹線。
VEGAさんと、コウくんと“富士山オフをやろう”
と盛りあがったのが始まりだった。
そのときは、やっぱり一度は登ってみたいし…、
というくらいの気分だったけど、
いろいろあって、私の中で、この富士登山は、
ものすごく大きなものに変わっていった。

毎日の生活の中で、“目指す”とか“がんばる”ってことが、
よくわからなくなることが多い。
だいいち、自分がどこに行けばいいかもよくわからない。
だから、“富士山の頂上”という明快なものを
目指し・到達した時に、自分が何を思うのか知りたかった。

んで、離婚話がまとまりつつあるとき、
さすがにいろいろとマイッていた。
いつもどおりの生活を楽しむ一方で、
なんともいえない敗北感と言うか、
もう私なんか、いなくなったほうがいいわ。
…なんてことも思ったりした。
それこそ、私を誰も知らない街へ行きたいと。

でも、ちょっと待てよ、と。
私には、万人日記という居場所があるよね、と。
いつも支えてくれて、見守ってくれる人が
そこにいるじゃないか、と改めて気づいたのだった。

それに、夏には富士山オフがある。
河口湖でもオフ会がある。
…富士山に登ったら、
少なくとも達成感は味わえそうだよね…。
と思って、ひとまずの目標を富士山の頂上に設定した。

落ち込んだらカラダを動かし、
大泣きしては、ウォーキングをし、
スクワットの疲れで、ぐっすり寝れるし、
なんか、これはいいかも。と思った。

そうやって、過ごした数ヶ月。
そんな私が、どうやら頂上まで行けそうだ。
と思うと、涙が出たのだった。
うれしい気持ちももちろんあったし、
あのときの自分にザマーミロ登ったわよ、みたいな
気分も、おおいにあったと思う。

…そして、頂上。
ご来光を待つ、たくさんの人たち。
ほんとうにたどりついたんだ。と思うと、
感激よりも、心からホッとした。
それだけで精一杯だった。
穏やかな気持ちで、ご来光を待った。

ひとまず“人生の目標”だった富士山は、
とても大変で、とても簡単だった。

やがて、ゆっくりとご来光が。
さすがに、感動がこみあげてきた。

夜明けって、こんなにキレイなのに、
いつもこの時間は寝ているんだ…と思った。
そう思うと、美しいものをまだまだたくさん、
毎日見逃しているのだろうなぁ、と思った。

コーヒー牛乳で温まると、ドッと疲れが押し寄せてきた。
胃も痛い…。
感動どころではなくなってきた。寒さも身にしみる。

きっと、感動はあとから少しずつこみあげるのだろうな、
と思いながら、下山道へ急いだ。

下山は、いろいろあった(笑)。
それはそれで、なかなかおもしろかった(笑)。
それにしても、下山はきついね。
登山は、目標があるからいいけど、
下山は、疲れてるしネムイし、
でも歩かなきゃ帰れないし、なんとも言えない気分だった。

この山道に、フトンがひいてあったら、
今すぐ寝るだろうってかんじ。

タクシーを待つ間に飲んだコーヒーのおいしかったこと。

このときの気分は、感動どころではなく
“宴会に参加できる体力はあるのだろうか”
というのが一番だった(笑)。

ホテルには、コマルねぃさんと、ののさんの姿が。
ののさんと抱き合って、
ヘッドランプのゴムで頭が痛くなった話をして笑われ
…あとは、よく憶えていない。

チェックインして、ひとっぷろあびて、
とにかく寝た。
疲れているからというよりも、
そう。宴会のために(笑)。

つづきはまた明日…。

***今日の一曲
     スターダストメモリー
              〜小泉今日子
       湘南坊主さーん!(笑)