ヒロシマ

ハイビジョンで見た「段原残影〜消えゆく街の記憶〜」という番組がとてもよかった。
比治山に守られて原爆投下後も焼け残った「段原」という広島の街。
「段原再開発」で取り壊されてゆく昔ながらの町並み。
その路地の一角での人々の暮らしと街への思いや、
立ち退き、取り壊しの様子を一年間追った番組だった。


切り倒される前に最後の花を咲かせる桜の木の下で涙する女性、
“原爆で亡くなった妹をここで私が荼毘に付したんです、小さいのになかなか焼けんでねぇ…”
と松の木を見上げながら語る男性、(この松も切り倒される)
あの8月6日から今日までいつもそばにあり共に生きて来たんだろうと考えると、胸が痛んで涙も出なかった。


段原の古い町並みは何度も自転車で走ったことがある。
未だに舗装されていないところも多くて、
子どもが地面に絵を描いて遊んでいるような路地だった。
狭い路地は確かに危ないし、都市計画も必要なのだろうけど、
原爆投下後からありつづけた日常の風景をもうちょっと残すことはできなかったのかな。


男性の家の庭の松の木は、5分もかからずに切り倒されて、
それを見ていた男性は“わきゃーないねぇ……”(あっけないねぇ)と何度も言っていた。
倒れた松の木を撫でて、枝を大切に手折っていた。


色んな気持ちで立ち退いた人がいること、
そんな路地があったことを私も覚えていようと思う。


新しい家に引っ越した段原の人たちの寂しさと、
被爆したすべての方々の苦しみが少しでも軽くなれば、と思う。
軽くなんてならないのはわかっていてもそれでも。
でも、被爆の様子をもっと私たちに教えてほしいとも思う。
忘れたいし思い出したくもないし話したくない人も多いと思うけど。
そんな気持ちを心にしまって原爆を語ってくれる方々の話をもっと聞きたい。
直接話を聞ける時間はそんなに長く残ってないのだから。
今年の8月6日は広島に帰ろう。


***今日の一曲
     ひろしま平和の歌